お客様と人生を共にしている感覚です
~hair Glow スタイリスト 金子清美~
 

中華街や山下公園、横浜スタジアムなどの観光地が存在する横浜に、馬車道という道路がある。幕末に幕府が神奈川(横浜)を開講させた時に栄えたその道は、今でも煉瓦で舗装された道やガス灯の街路樹など、当時の面影が色濃く残っている。そんな風情のある路地を曲がり、階段を降りると見えてくるのが「hair Glow」という美容室だ。オープンして11年目を迎えるこの美容室は、大々的な広告を打つ事なく、口コミを軸に地域のお客様に愛され続けている。移り変わりの激しい美容業界で支持され続けている理由を知る為に、hair Glowのオープン時から働いている美容師さんにサロン、そして美容師という仕事の魅力について聞いてみた。

美容師になろうと思ったきっかけは何ですか?

子供の頃ってお母さんが髪を結んでくれる事が多いと思うのですが、私のお母さんはそれが上手くなかったんで(笑)自分で結んでいたんです。今振り返るとそんな小さな出来事がきっかけだったのですが、子供の頃から髪をさわる事が多かった私は、「将来は美容師になる」と決めていましたね。

迷いはありませんでしたか?

高校3年生の頃友達の殆どが大学に進学を決めている中、専門学校に進学して美容師になるという想いに迷いはありませんでした。「大学に進学してから4年間の中で進路を決める」と考える人は多いと思います。決してそれが悪いわけではないと思うのですが、自分が興味のない事を4年間学ぶのであれば、好きな事を学んで早く働きたいと思っていました。

当時は美容師ブームでしたよね。

今では考えられない人気ぶりでした。私が就職したサロンも、10数倍の倍率があり3次面接までありました。沢山の美容室が開業して、メディアにも出て、世の中に「美容師になりたいと思わせる」事が色々な手段で起きていましたから。当時は専門学校に入学出来ない人もいました。すごかったですよね。

就職先のサロンはどうやって決めましたか?

7~8店舗の説明会に参加し、実際にお客としてサービスを受けた中で決めました。学校の先生からの後押しも決め手のひとつでしたが、やはり「技術がしっかりしていた」のが一番でしたね。

金子さんは入社して2年弱で今のサロン(hair Glow)に転職していますよね。その理由は?

入社した職場で上司になった方が独立される事になり、何としてもついていきたいと思ったんです。私にとっては、その上司との出会いがとてつもなく大きかった。入社当初、何度も辞めたいと思い相談していたのですが、仕事についてはもちろん、もっと深い部分、人生について色々教えてもらいました。一つ一つの出来事を紐解いて、細かく助言して下さって。「世の中そう甘くない」という事を教えられましたね。仕事や人に対して凄く厳しい方です。

そんなhair Glowの魅力は?

スタッフ同士の関係性が魅力です。少人数という事もあり、仕事の中で意見を言い合いぶつかる事も多いのですが、オーナーを含め、全員でケアし合っています。仕事以外でも全員でゴルフにも行きますし、八ヶ岳に畑を耕しに行く事もあります。もちろん、プライベートだけでなくスキルアップに対しての環境も整っています。実践も早いです。カット以外の事はカラー、パーマ、ブロー等、大規模な店舗だと扱うまでに時間が掛かりますが、少人数なのですぐに手がける事ができます。あとは、お客様との関係も本当に深いサロンです。hairGlowは関内の馬車道にあるのですが、お客様の目に入りにくい地下にあえて出店しています。それは、全く知らない人がいきなりお店に来る事で、お店の雰囲気、常連のお客様との関係性を壊したくないという理由があります。もちろん新規の方も大歓迎なのですが、常連のお客様とのバランスや関係性を大切にしています。おかげさまで、長く通って下さるお客様が多いですね。結婚したお客様がパートナーを連れてきて下さる事も多いですし、孫の代まで通われているご家族もいらっしゃいます。人生を共にしている感覚です。

壁に絵が飾っていますよね?

美容室一帯をアートスペースとして活用しています。普段、美術館に行って絵画を楽しむ機会ってそんなにないですよね?なので、カットの間やカラーの待ち時間に絵を見てもらう事で、新鮮な気持になって頂いています。取り扱っている絵画は世界的に有名な先生なんですよ。四季折々、美容室の景色が変わるんです。

美容師としての仕事の魅力って何ですか?

「お客さんが笑顔になって帰ってくれること」ですね。美容師の仕事は労働時間が長く立ち仕事なので肉体的にも大変ですが、自分の手でその人を喜ばせる仕事ってなかなかないと思います。大きな会社だと感じられない事じゃないかなと。髪の毛って、絶対やらなければいけないじゃないですか。そこで満足感を得るというのは難しいけれどやりがいがあります。それと、髪の毛ももちろんですが、私生活で何かがあって、気持ちが落ち込んでいる人もいらっしゃるので、お話を聞く事ですっきりして頂ける事もあります。皆さんそれぞれ異なる悩みや欲求があるので、何を求められているのかを察して、解決しようと心がけています。それだけ深い関係を築く事が出来るのは何物にも代え難い魅力ですし、直接「ありがとう」って言って頂けるのがやっぱり嬉しいですよね。

逆につらいと思う事はありますか?

お客様の髪がきれいにならない時、それは本当に辛いですね。考えられるありとあらゆる手段を使っても出来ない事もあります。それはもともとの髪質やご自宅でのケア、食生活等色々な原因があるのですが、どうやったらキレイになるのか、先輩やディーラーさんに聞いたり、原因をひたすら考えていく、その繰り返しです。技術には終わりが無いので、ひたすら修行です。

今後の目標は?

「どこかで店を出して」という明確な目標は無いのですが、今いるスタッフやお客さんと共に年をとって、寄り添いながら成長していきたいです。今の世の中、日々色々な事が起きていて、何があってもおかしくないじゃないですか。どんな状況であってもお客様の為に尽くしていく。自分がその様な気持でいる事が出来れば、いつの時代でも自分を必要としてくれる人がいるのだと信じています。その為の修行ですね。今は。

インタビューを行ったのは平日の18時30分。この日最後に来店されていたお客様はGlowに通い10年以上、オーナーとは20年来のお付き合いの様でスタッフ全員と仲が良く、気がつけば金子さんや他のスタッフを交えた雑談が始まり、笑いの絶えない取材となった。このやり取りに、移り変わりの激しい美容業界でお客様から支持される理由が凝縮されていた。

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